偶像崇拝がカフェ設営の最善手だった話

お陰様で先日大学院を修了しました。てしまです。学生生活は様々な彩りに満ち、色を与えてくれた友人や講師陣には感謝が尽きません。

さて、楽しかった学生生活の中でも特に奇妙で思い出深いコンテンツとして大学祭が私の中で大きな存在として在ります。今回は大学祭にまつわる、私が体験した奇妙な出来事を備忘録として書いていこうかなと思います。

 

私がこの春卒業した広島市立大学の大学祭はアクセスに少し不便な立地やさほど多くない学生数も関係してか、おそらくは他大学と比べるとショボめの規模の学祭だったと思います。客として来ると午前中には全て見て回れてしまう。そのため、学生は「つまんねーから行かね〜笑」と斜に構えた消費者タイプでこの先の人生で何も生み出すことの無い芸術学部に入っても卒業が目標で作品制作にも熱を込めないカスと、「自分で何かして楽しむか」という創作者タイプに自然に分かれてゆくワケです。

 

創作タイプの学生は大多数が自分の専攻を生かしたショップや展示、カフェなどを企画設営します。特に芸術学部ではカフェ展示が人気で、毎年いくつものカフェが乱立し、私自身も修士一年の時には刃牙シリーズのオマージュカフェ、刃牙カフェを企画し大いに大学祭を楽しみました。

 

その芸術学部カフェの中でも一際大所帯で準備に時間を掛けているカフェが、私の友達が企画運営する“ブラザーズカフェ”でした。

ブラザーズカフェ、数年前より学部学年を超えた精鋭部隊で運営されるカフェで、毎年芸術学部棟の一階、棟の正面階段を降りたあたりにブースを出しています。私自身は関わりがありませんでしたが、私も自分の企画したイベントを設営している中で何度も作業中の彼らを横目に見ていました。

 

作業中彼らは何度も

 

「これでいいかな?」

「いや、これだとナツミは認めないだろう」

 

「あの調味料はビンと缶どっちがいいかな?」

「ナツミはビンを選ぶだろう」

 

「テーブルはいくつ必要かな?」

「それよりも、間接照明の方がナツミは重要だと思うだろう」

 

と繰り返し言うのです。

しかしいつもその場に『ナツミ』と呼ばれる人物の影はなく、ただ「ナツミなら…」と語られる情景だけを目にしていました。

 

「ナツミ……?」

 

私はその人物が誰なのかわからないまま、「ナツミなら…」を繰り返しつつ作業を進めて行く彼らを見つめていました。逐一確認を取る事に違和感もありましたが、それでもモリモリと設営が進んでゆくので、ナツミは「王様政治っぽいけど、的確な指示を出す優秀な人物なのだろう」と思っていました。

 

大学祭を数日後に控えた私は後輩と慌ただしく自分のイベントの準備を進めており、気付くと既に終バスの時間はとうに過ぎ、昼とは打って変わって構内は人もまばらで残っている人は皆自分たちと同じく大学祭の準備に追われ残らざるを得なくなった学生だけ。

そんな中で私が後輩と深夜のタバコ休憩をカマすべく芸術学部棟の入り口まで降りると、ブラザーズカフェも例に漏れず灯りが点き作業を続けているようでした。なんとなしに会話を聞くと、「ナツミ、これはここでいい?」と訊ねる友人の声。「ナツミがいる?」と思った私は、後輩と「ナツミを見に行こう」と言い、階段下で設営を続けるブラザーズカフェに気付かれないよう階段上からコッソリ近づきました。ブラザーズカフェでは相変わらず

 

「ナツミ、カレーの味付けはこれでいい?」

「ナツミ、値段は450円でいいかいね?」

「ナツミ」

「ナツミ」

 

作業をするブラザーズカフェの面々は確認のたびに「ナツミ」と一方向を見て言います。

私と私の後輩が「ナツミ」と呼ばれる方向に目をやると、そこには“土でできた人形”が置かれていました。

 

「えっ」とつい声を出したのは私の後輩。

私は固まって動けませんでした。

 

彼らは口々に土でできた雑な人形に向かって

「ナツミ、椅子が出来たよ」

「ナツミ、当日の仕込みはこれでいいかな?」

とやけにぎらぎらした目で話しかけており、その光景はただ異様と言う他ありませんでした。

 

私と後輩はタバコの事など忘れ、悪い夢を見たと自身に言い聞かせるしかなく、その日はお互い何も言わず作業を中断し解散しました。

 

大学祭当日、ブラザーズカフェにはその日だけ雇ったであろう、準備期間中には姿形も無かったハーフのイケメンが「ナツミ」として雇用され、よく目を凝らして見ると店の奥にはあの土人形が佇んでいました。

 

 

 

…………この話は全て本当にあった事です。

広島市立大学で大学祭を行う際、先輩からカフェ設営に誘われた方、くれぐれも気をつけて下さい。

 

日常の中に奇妙な世界は潜んでいます。

 

 

 

 

2019年3月29日______________

ワンチャンのメリット

首の皮一枚だ。

 

 

正しくは首の筋のようなものが一本だけ残ってる感じ。

 

 

▪️

 

 

最近、と言っても数ヶ月前のこと、その夜私はサークルの飲み会に参加していた。ほどよくお酒も体内に巡り、少々理知的な判断も欠き始めた頃(普段の私は“金持ちの家の金属製の表札を盗んで売り飛ばし、その金で酒を飲む福岡市の大名あたりに住む浮浪者”ばりの高潔なモラリストなのだが……)、後輩の女の子に私は懇願していた。

 

「ワンチャンお願いします」

 

最低なお願いだった。

ワンチャンとは性行為の受諾を表す言葉で……そう考えてみると“性行為の受諾”自体は神聖なものだと言う事は誰も疑いようのない事で、更に言うならば“性行為の受諾”を神聖で聖書的な言葉だとすると、あの時心からの言葉として“性行為”を“ワンチャン”と再翻訳して提示した私は、聖書をドイツ語で翻訳したルターと同格かそれ以上だったワケですが、ルターばりの神学者である私に対して後輩の女の子は「私に何かメリットがありますか?」と後に島原の乱に発展する当時の幕府が敷設したキリスト教禁令の如く冷静な回答を私に返してきました。当たり前のことだけがその場で起きていました。

私の優秀な脳のシナプスは瞬時に「メリットあるか?ねえだろ、の反語表現=ワンチャン無い」の式を構築し、構築済みデッキとして同じミスを犯さないよう脱童スターターパックとして後輩に配布しようかと考えましたが、その式を認める事は要するにワンチャンの『詰み』であったので、「メリットとは」とメリットの再定義を試みる事により自分への死刑執行の延長を試みたのである。泥の中で。

 

私にしかないその娘に対するメリットを考えてみた結果、もう言い寄らないことが一番のメリットだ、という事は神龍時ナーガの阿含ばりの神速のインパルスで初期段階に判明していましたが、それ以外のメリットを私はここ数ヶ月考えて来ましたので、発表します。

 

「紫陽花の咲く場所を知っている」

 

「共に、ミステリーサークルを作れる」

 

「蛍が飛ぶ川瀬を案内できる」

 

 

 

 

いかがですか。

私としては「共に、」がキモすぎる。という感想くらいしか持ち得ませんでした。

 

その女の子からは更に「私面食いなんで」と遠回しのようでクソ直球なボールを頂き、刃牙で言うところの“園田の弟子の警官がビスケットオリバを投げようとするも、脳裏に絶対に動かないであろう大木に対して自分が背負い投げを掛けている像が過ぎり敗北を確信したシーン”と同じ状態に陥りました。

しかし、またしてもほとんど首無しニックばりの首の皮一枚でなにかを再定義する事で、そのなにかとは何なのかも不明瞭なまま、自我の死から時間稼ぎが出来るのではないかと……努力をするもしないも才能うちやと……

…ほならね、ブラジルの選手そこでワンチャン諦めてますかと……、他人の人生を生きるなと。あえて、あえて後輩の女の子に彼氏がいる事は考えずにおく、あえてワンチャンあっても断って一人で家に帰ってみる。

人生って、あえての連続なんですね。

 

 

________keisuke HONDA

 

 

 

 

 

学びですね。

 

 

 

 

殺して。

MCバトル漫画、いまだ成功例無い説

ラップブーム終わりましたね。

 

終わりましたが、2015年あたりからMCバトルが流行り始めて(高ラから数えるならもう少し前から)、私はいまだにフリースタイルダンジョンも観ているし現行のバトルシーンも一通り追っています。また、バトルMCだけでなく、hip-hopシーンも興味を持って聴いています。むしろ世界の潮流からして日本でhip-hopが流行ってないのが謎だと思ってるくらいです(何故か日本では有名で発言権のある人の曲ほどダサい現象のせいだと思いますが)。

今回の記事の本筋に関係ない話ですが、たまに「ラップブーム終わりましたよね」と人に言われたら、マウントを取るように「2016年にyoutube上でフリースタイルダンジョンyoutubeでの配信をやめたあたりからMCバトルのブーム前夜からその大きなムーブメントに気付いていたオタク達は『あぁ、もう収束に向かって行くのかな』と感じていたし、今更ブームが下火だと言われても……笑 私はもっと早くからそれを感じてましたけど……?(微笑む)(机の水を飲む)(微笑む)」と早口で捲し立て、コーナで差をつけてしまうオタクと化してしまいます。

 

 

 

完全に話が逸れましたが、

漫画界はその時々のムーブメントを取り入れた作品が、その時々に応じて生まれますよね。

 

MCバトルの流行により、この数年で何作もMCバトルをモチーフにした漫画が生まれました。

曽田正人先生が月刊ヤングマガジンで連載中の『Change!』などが現行のMCバトル漫画の代表例だと思います。

 

そのMCバトル漫画の中でいの一番に発表された作品は、てしまの観測出来る限りの中ではcent先生がジャンプルーキーで発表した『マイクを握れば』

https://rookie.shonenjump.com/series/FlR8CfECvJs

だと思われます。2015年の9月17日に第1話が公開されています。

 

その他にも週刊少年チャンピオンで連載されていた前にいきいきごんぼを描いていた陸井栄史先生の『サウエとラップ〜自由系〜』、おそらく唯一の四コマMCバトル漫画(四コマだったり四コマじゃなかったりだけど)である背川昇先生の『キャッチャー・イン・ザ・ライム』、インカ帝国先生の『ラッパーに噛まれたらラッパーになる漫画』が新都社(確か)で公開されたのもかなり前の事だった気がします。

来月からもまた新しく別冊少年マガジンで額縁あいこ先生の『丹沢すだちが此処にイル!』という漫画が始まるようです。

Twitterでもラップをネタにした就活漫画がバズってたり、何かの新人賞で公開されていたMCバトル漫画が甘くバズってましたね。

 

 

けど、この中で成功してる作品ありますか?

たしかに『Change!』は実際に行われているMCバトルイベント、高ラや戦極MCバトルなどが名前もそのまま出ていて提携協力していたり、『キャッチャー・イン・ザ・ライム』はラッパーの般若さんやR-指定さんが監修していますが(ギャグ漫画でしたが『サウエとラップ〜自由系〜』も……)、漫画表現としていまだMCバトルを正しく描けている漫画現れてなくないですか???

まず、バトル中のライミングを一人の作者が考える事が何か違う気がするんですよね。唯一『サウエ』くらいじゃないですか、毎週別のラッパーを呼んで歌詞作ってたの。

けど、更にそれ以前に漫画の中でわざわざライムって全文書かなきゃいけないんですかね?

吹き出しの中で漢字はゴシック平仮名は明朝体の漫画文字で抑揚(それこそフロウよね)のないままライミングしても、何も通じなくないすか?

 

要ります?文字。

もうわざわざセリフでライミングするのダサくないすか?

BLUE GIANT』みたいにその場の覇気みたいな熱量だけ描いて、それだけでも充分通じるくないすか?『BECK』のコユキが歌ってる時みたいな逆に無音感ある表現とか。もしくはライムを書くにしても『日々ロック』みたいなレタリング表現でフロウやらバイブスを表現すべきじゃないすか??

TwitterでバズってるMCバトル漫画みたいなのは、作者が「流行ってるから描いてみた😉」みたいな感覚でしか描いてないから全くその辺の機微無いですよね。大概韻も語尾でしか踏まないし。

ベテラン漫画家の曽田正人先生も、め組の大吾を始めとする諸作品から判るように勉強熱心な方なので一通り目を通して見てみてはいるのでしょうけど、担当から「MCバトルを題材に描いてみましょうか」とか言われて描いてる感否めないんだよな。MCバトルを理解していて、まともなセンス持った人間がフキダシに全文のライム書くか???

 

絶対わざわざ文字化する必要無いんだよな……。ライムとフロウとバイブスの中でフロウとバイブス無しでするジャンケン、武蔵が居ない時のデビルバッツはパーの無いジャンケンと揶揄されてたけどそれよりヤバいでしょ。それじゃ夕日ガッツズにすら勝てないと思うんですけど。

 

ライミング全文を書かずに雰囲気や描写で熱量を伝えようとしてたMCバトル漫画、逆に『マイクを握れば』しか無い説あるんですよね。

 

 

能力バトルとか格闘漫画などの、視覚でわかりやすい戦闘描写は漫画界でかなり土壌が豊かだと思いますが、文字表現(フォントとかね)やセリフ表現の土壌はまだ発展途上ですよね。コエカタマリンから大した進歩無い気がします。MCバトルというコンテンツが流行って、その尻馬に乗って漫画会がMCバトルというコンテンツを消費しようとするなら、せめてその未熟な土壌の何か足しになればいいですね。

 

完全に話が逸れますが、流行りのフォントとか文字表現ってありますよね。漫画界でそういうのが活用され始めてる感あります。デデデデ然り、秋本治氏の新連載で使われていたタイトルのフォントや配置、あれ完全に秋本治の考えじゃなくて、そのまわりの人間たちが「秋本治は新しい潮流についていけてますよ」を演出するための露骨な新しさ描写でしたよね。かなり太いゴシックが空に浮かんでるようなやつ。浅ましかったわ。

 

 

MCバトル漫画が大ヒットするの、榎屋克優先生に描かせるのが一番可能性あると私は信じてます。

私が橋本環奈とストリートワークアウトをした話

私の住む街、広島。

広島市内から自転車で10分ほど、横川駅からも自転車ならば5分も掛からず通えるのが私の住む中広という町である。太田川の放水路と天満川に挟まれ、なんとなくジメッとした陰鬱な雰囲気もあるが、交通やスーパーマーケットの近さなど多種多様、諸々の利便性がある暮らしやすい土地でもある。

 

 

ストリートワークアウトという文化がある。

Wikipediaからの引用で申し訳ないが、ストリートワークアウトとは「主に戸外の公園や公共施設で行われる身体活動、トレーニングである。

発祥は古代ギリシャまで遡るが、ロシア等東ヨーロッパやアメリカ合衆国で人気のムーブメントとなり、現在では世界中に広がりをみせている。ストリートワークアウトを構成する主なトレーニングメニューは腕立て伏せ・懸垂・マッスルアップ・ディップス・腹筋運動・スクワットである。これらに加え、静止系のトレーニングであるヒューマンフラッグ・フロントレバー・バックレバー・プランシェといったものも存在する。」といった内容のもので、中にはパフォーマンスを競う世界大会なども開かれたりしているが、一般には「公園など野外で行う筋トレ」と説明すれば簡潔に伝わるのではないだろうか。

 

私の住む中広という町は公園が比較的多く点在していると思う。

その中でも、中広第二公園はストリートワークアウトにかなり適した公園だと思われる。懸垂をしてくださいと言わんばかりの設備、ある程度広いグラウンド、家から徒歩で数分……かなり良い場所である。

私も毎日行くわけではないが、今日は食べ過ぎちゃったな、と思った日は贖罪のように中広第二公園に足を運んで自らの身体を持ち上げたものだった。

 

その中広第二公園で橋本環奈と出会ったのは2年前の夏だった。

去年の夏はそれほど熱く感じなかったが、2年前の夏はそれはそれは暑い夏だった。

 

陽が落ちてもなお湿度は高く体感温度はさして昼間と変わらない鬱々とした7月の下旬、8月はもっと暑くなるのかと考えただけで汗がどっと噴き出るが、夏の虫の音がそのべったりと肌に張り付く汗に濡れたシャツの嫌悪感を少しは和らげてくれていた。

 

虫の音を聴いていた私はその時サークルの飲み会帰りで、一人で「今日は食べ過ぎたな」などと思いつつ、酔いも覚め切らぬ中私は中広第二公園に腰を下ろしていた。暴食の償いにこの公園に来たというより、家から近い場所で少し夜風に当たって休みたかったというのが本音だった。

時刻は既に0時を回っていて、日頃はうるさい高速4号線の車の走行音も今は鳴りを潜めて静かだ。

 

ふと思い立ち、遊具の鉄棒で懸垂でもしようかと腰を上げた時、いつから居たのか、どこかの銭湯のロゴマークが入ったタオルを首に回し、ピンクのキャップを被り、ダサいジャージを着た小柄な女の子が目の前に居た。

最初はその格好から、近所のオバちゃんが私と同じように運動不足の解消にこの公園に来たのかと思ったが、その顔を見て驚いた。

「橋本環奈だ」。

 

「何故ここに橋本環奈が?」と疑問を持つより前に、ただ橋本環奈の可愛さを全身に受けていた。そっくりさんだという考えは私の頭に全くよぎらなかった。本物のオーラがその公園に広がっていた。

 

私は橋本環奈のオーラに当てられたのか、朦朧とした気分になり、この世が中広第二公園しか無く、中広第二公園の下にはゾウが数体居てその地盤を支え、そのゾウの下では亀がまたそのゾウを支えていると一瞬で公園の構造を紐解き、この世はこの中広第二公園で完結している事を察した。何が正しいのかわからなくなった。橋本環奈の可愛さがそうさせた。

 

私は“世界”の中で僧帽筋を責めるべく遊具でビハインドネックチンニングを始めた。“世界”の中で“世界を象る橋本環奈”が目の前にいる、“ヒト”の私が自己を研鑽しより上を目指す事は、モノリスに触れたヒトザルが道具を用い始め人類の萌芽が生まれたように必然だった。

ツァラトゥストラはかく語りきツァラトゥストラの語る超人とはこの場で誰を指すのか私には理解が及ばなかった。

 

私は橋本環奈を肩車し、ワンレッグスクワットをカマした。

大腿四頭筋ハムストリングスがキレ始めた。先程まで嫌悪感しか無かった自らの汗が心地よい代謝へと変わって行く。

橋本環奈を抱えナローグリップベンチプレスを、橋本環奈を担ぎフロントブリッジを、橋本環奈を持ち上げクランチを……二人の呼吸音だけが無音の夜に溶けていった。

 

 

その夜、私は橋本環奈と一緒に眠った。

 

 

朝起きると橋本環奈の姿は無く、公園は既にゾウに支えられてはいなかった。

いつもの、いつのまにか馴染んだ雑踏の隙間にあるしなびた公園に戻っていた。表の通りではコンビニから出た大量の廃棄をコンビニの契約ゴミ収集車が回収を始め、中広中学校前のレストランミールの二階では殺人事件が起きていた。いつものジメッとした悪い気を溜め込んだ中広町に戻っていた。

 

今日も暑い日になる。朝とは思えない優しさのかけらもない強い日差しをまぶたに受け目覚めた私は、いつもと変わらない足取りで、数100m北にある自分のアパートに帰り、もう一度寝た。

 

橋本環奈とは二度と会わなかった。

真面目こいてバカ見てるの私だけなのかよっていう話です。

 

うちの大学、猫が住み着いてるよな。

四匹か五匹くらい、私が入学した五年前からずっと大学構内におる。

この猫、誰か個人が管理して飼っているわけではなく、大学側も対処にハッキリとした姿勢を持っておらず、猫の会という集いも、猫の行動によって誰かが不利益を被った時の責任を負うわけではない……という意味では管理はしていない感じの、曖昧な立ち位置なんよ。

 

猫に餌を与えている人間をよく見る。

何故、と聞くと大概が「可愛いから」「可哀想だから」という理由。家に持ち帰ってペットとして飼う決意があるわけでもなく、通りすがりに餌を与え四年間の大学生活の中で猫の可愛さだけを搾取して「あー可愛かった♪」で卒業する、ヤリマンの家にたまに行って付き合う気はサラサラ無いけどセックスしてピロートークもなく帰るような男の亜種。

 

猫、たまに増えてる。猫の会という、皮肉なしに素晴らしい活動を行なっている組織(里親探しや去勢手術してる。マジに偉いな。)が誕生する以前はポコポコ子供が産まれていたけど、今は元からいた猫は全員去勢されて内部で増える事は無いようになってる。しかし、外から新しい猫(勿論去勢されてないやつ)が現れたりってのがたまにあるから、もう増えないとは限らないのよね。

言い切るけど、餌を与えて可愛さだけを搾取している人たちは増えた時の責任は絶対に取らないんだよな。猫の会が去勢手術をしてようがしてなかろうが絶対に変わらず「カワイイ〜😭」つって餌を与えてる。

 

無管理の猫が大学構内に入ってきて、糞尿を研究室に残していったり、仕留めた小動物のはらわたを学生会館に置き去りにしている事が年に何度もある。猿が同じ事をしたなら200000000回は射殺されてる事案だよ。マジで。鹿でも300000000回は死んでるよ。

もし私がゴキブリをめっちゃ可愛いと思っていて、「可愛いから」という理由でゴキブリに餌を与えて、ゴキブリが増えても何も対処せずに卒業してたら確実に頭ヤバいだろ。

そのヤバい事を脳の足りない「可愛いから」という理由で餌を与えてるバカが毎日のように大学で起こしてんだよ。

 

それで、私みたいな意見は大体封殺されるんよ。

猫って可愛いもんな。可愛い可愛い猫に対して「猿なら200000000回死んでっゾ」とか言ったらそりゃそれなりの目を向けられるわけ。

けど、そういう理由やらでこうやって言葉に出してない人たち、絶対「猫可愛い😹」っつってる人間より数が多いと思う。被害被ってる人間の数もな。

 

根拠のない、しかし確信している話になるけど、もし私が「ぼちぼち大学と保健所に電話して猫引き取ってもらうわ」とか言った時、「保健所に送るなんて残酷😡😡😡」って私に言ってくる人が仮に居たとしても、そいつ、間違いなく家で買う事は視野にないと思う。だからこそ、今芸術棟4階に畜生のウンコが鎮座する事になってるんだよな。

 

猫好きの人間、猫の可愛さは万国共通で全員が尊ぶべき物!みたいな思考をあまりにも盲信しすぎなんだよ。

猫右翼の方々、猫と同じように可愛いからという理由で全てを許されてきた人生イージーモードの美人か、それか根本的にバカかの二択だと思う。これ間違いないでしょ。これイグノーベル賞ってか、ノーベル賞狙えるわ。これでノーベル賞取れたら、故ノーベル氏へのリスペクトとして猫爆殺するよ。

 

 

 

…………………っていう私の考えを、「大学にいる間だけ猫に癒されて卒業したら知らんぷりでよくね?」と最近フツーに返されて、「あれ?真面目に考えてるの私だけ?勝手にムカついて……めっちゃバカみてる?」ってなっちゃったっピ………………………。

 

餌、あげちゃダメ。それで飢え死にするならそれまで。寒そうだからって大学の中に入れるの頭悪すぎるだろ。なんの責任も取れないクセに。
話の流れ少しだけすっ飛ばすけど、馬鹿が生き物の寿命を語るなよって私が7ラリーくらい後にキレてるのが見えてる。半分ブーメランになってるの私も自覚してるけどそれを踏まえての発言だよ、、馬鹿向けに解きほぐして書くの面倒くさいな。

 

あと全然関係ないけど、「猫 料理」とかで調べたら日本なら一番最初に広島の闇市での猫おでんが出てくるのウケん?私はウケてる。

広島伝統の味は猫のおでんだ。クソ美味いってはだしのゲンの作者が言ってる。

 

 

…………私は猫の事全然嫌いじゃないです。猫に餌を与えてる可愛さ搾取の人間がクソキモいですって話。

今日は学食のカレーでも食べようかな。今日は修士論文の参考文献でも探そうかな。今日はハトの頭でも燃やそうかな。今日はらしんばんに並んでるブレンパワードのテレカでも買い占めようかな。今日はいあいぎりでもダーテングに覚えさせようかな。今日は洗濯機で洗濯機を洗おうかな。今日はソシャゲでも作ろうかな。今日は全体会議でも開こうかな。今日は役者の卵でスクランブルエッグでも作ろうかな。今日は鳥取砂丘パラリンピックでも開催しようかな。今日は足音でも集めようかな。今日はピアノの音に合わせてタオルでも畳もうかな。今日はメルカリで乾電池でも買おうかな。今日は思夏期にでも入ろうかな。今日は守護月天でも守ろうかな。今日は召喚酔いでもしようかな。今日はもう使ってないリュックサックを近所の墓地にでも捨ててこようかな。今日は身内しか来ない場末の居酒屋に両手に包丁を持って来店しようかな。今日は明治のチョコでメンヘラでも錬成しようかな。今日はmetooで静岡で獲れるえびしか桜えびと名乗ってはいけない事でも告発しようかな。今日はコーヒーカップで発電でもしようかな。今日は竹取翁にでもなろうかな。今日は温水プールをオナホにでもしようかな。今日はパッヘルベルのカノンへアンサーソングでも作ろうかなぁ。今日はthug lifeにでもしようかな。今日はバトルセックス漫画でも描こうかな。今日は夢の中で親でも殺そうかな。今日は大気圏突入する人の気持ちでも受け止めようかな。今日は明日まで取っておこうかな。今日は初代プレステを下駄にでも改造しようかな。今日は合法LSDでお菓子の家でも作ろうかな。今日はモグラでも見つけようかな。今日はエピデンスでも求めようかな。今日は韻でも踏もうかな。今日はバーニングマンの参加でも表明しようかな。今日はベルリンの壁の破片でレジンアクセサリーでも作ろうかな。今日は聖書の一節でもサンプリングしようかな。今日は昔好きだった人の家の鍵にガムでも押入れとこうかな。今日はイキリオタクで佃煮でも作ろうかな。今日はWEGOの株でも買おうかな。今日は井戸でも埋めようかな。今日は戦争のことでも考えていようかな。今日は町の老人とジョグレス進化でもしようかな。今日は大学の支柱でも折ろうかな。今日はな行だけで生活しようかな。今日はサンバイザーでも作ろうかな。今日は藤子・F・不二雄でも口寄せしようかな。今日はバンキシャでも叩こうかな。今日は癌でも発見しようかな。今日は比叡山の山頂で愛でも叫ぼうかな。今日はフットサルサークルの悪口でも考えていようかな。今日は生活圏内の全てのセブンイレブンの宅配サービスを利用しようかな。今日はパイズリの練習でもしようかな。今日はビニール袋で船でも作ろうかな。今日は意識でも保とうかな。今日は一日旧姓でも名乗ろうかな。今日は整体に行って鎖骨だけ攻めてもらおうかな。今日はスキー場で夏でも食べようかな。今日はマンホールでも開けようかな。今日は原爆の模型でも買おうかな。今日はか弱い存在でも改造しようかな。今日は朝焼けをバターと混ぜてクッキーでも作ろうかな。今日は濃霧を飼おうかな。今日は部屋の壁紙を生ハムに変えようかな。今日はハイブランドの服を燃料にキャンプファイヤーでもしようかな。今日は表千家流茶道に科学という名の一石でも投じようかな。今日はバーグハンバーグバーグをチーズ入りにでもしようかな。今日はめっちゃホリデイにでもしようかな。今日はワンダと巨像でも因数分解しようかな。今日は無限の先に常備菜でも置いておこうかな。今日は思い出の中にしかない景色をスケッチして二科展にでも出そうかな。今日はコンドームを二層にしようかな。今日はハードオフで生爪でも売ろうかな。今日はビジネスホテルのアメニティだけを食べて過ごそうかな。今日は骨折した人を十人見つけるまで家に帰らないでおこうかな。今日はスマートフォンの画面をブロックシールででもデコろうかな。今日は家の障子を煮出して作ったお茶をハムスターにでも飲ませようかな。今日は仕送りを全てビットコインにでも変えようかな。今日は天井の高い家に風船でも浮かべようかな。今日は耳鳴りから天啓でも受けようかな。今日は思春期の性欲を全てにゃんこスターにでもぶつけようかな。今日は伊賀忍者の方に加勢を送ろうかな。今日は地元のお土産でも爆買いしようかな。今日はカンボジアへの旅費でも積み立てようかな。今日は初恋の人のブログでも荒らそうかな。今日はガラス片で街にタギングでもしようかな。今日はスィズアープにおくすりのめたねでも混ぜようかな。今日は堕ろした子供に宛てる手紙を出すアプリでも開発しようかな。今日はサーフィン用具の専門店でハンドパンでも演奏しようかな。今日は聖書でも全否定しようかな。今日はキャベツ畑やコウノトリでも信じていようかな。今日は東京チカラめしの看板に日焼け止めでも塗ろうかな。今日は定休日が不定期の町の人気ベーグル店でも襲撃しようかな。今日はSiriにロボトミー手術でも施そうかな。今日は宝石の国との貿易摩擦でも解消しようかな。今日はバイト先の人間とバトルロワイヤルの音読会でも開こうかな。今日はスミス&ウェッソン社にエントリーシートでも送ろうかな。今日は元カノをセフレにでもアップデートしようかな。今日は青空の色をそろそろCMYKで決定付けようかな。今日はマナカナを用いた人体実験の案を公募で決めようかな。今日はたんぽぽの綿毛だけで人をダメにするソファでも作ろうかな。今日は嘘喰いの連載終了でも嘆こうかな。

 

嘘喰い連載終了。迫稔雄先生、11年間お疲れ様でした。

twitterで「研究費でペンを買おうとしたら、そのペンは本当に研究室で使われるのかわからないのでお金は出せないと言われた。この理論だと何も買えない」というツイートが流れて来ました。

なんというか、すげーロジカルな……思考停止のお役所仕事に購入を遮られましたよ、というお話ですが、このペンやらの雑品を購入する事は、本当にこれ以降やこれ以前も出来なかったんですかね。この申請をした人のひとつ上の役職の人、または同じ窓口でも別の人に言えば結果が違ったりしたんじゃないでしょうか。購入の申請を受けた人が滅茶苦茶無能だったとか、そういう説は無いんですかね。

 

昔、私が一年生の時、今でも私が所属しているサークルの部室の鍵は部室のドアの上の蝶番的な所に乗せてあるだけで、更にそんな部室の中にある部費の入ったロッカーの南京錠は、少し力を入れたら外れる事が私の友人の佐川どんが発見(今思えば、何で、どういう目的で佐川どんは部費の入ったロッカーの鍵をイジってのかはわからないが)したくらい、適当なクソザルセキュリティでした。

なので、当時一年の私は三年生か二年生だったかよく覚えていないが、当時の部長さんに「部費で新しい南京錠を買いましょう」「あと、部室の鍵を入れるヤツも買いましょう」と進言した所、何故か部長は自費で購入する流れのトークを展開し始め、「いやいや、これはどう考えても部費で買っていいのでは」と尋ねると「部費は部員全員のものだから、少なくとも幹部全員に聞かないと使えない」と答えられ、「それでは、幹部のLINEグループとか、スカイプトークとかあるんですか」と聞くと「無いし、全員の連絡先は知らない」と言われ「じゃあ部費は毎年どうやって誰が誰に許可とって使っとるねん」と私がキレながらLINEグループを作るハメになった次第で、その後腹いせのように私は部費を濫用した過去があります。

関係ないけど、昔部室にあふれていた卒業生の残していったトレーディングカードやらも、「邪魔にしかなっていないし、誰も使っていないので捨てるか売るかしましょう」と私と佐川が言うと「売ったら部費に還元しろ」という、何故か片付けのために動けば動く人の方が損をするクソシステムを提案され「共産主義はまだ続いてたんや……」と赤い星の見える部室の窓から私はポツリと呟き、外ではかつての十月戦争よりソビエト連邦の国家となった“インターナショナル”が兵隊の足音と共に流れて来ていました。数日後、私と佐川は『革命』を胸に、毎週木曜あたりをカードを売りに行く日とし売った金で松屋のカレー牛丼を食べる『カレギュウの日』を設ける事により、労働に対する正当な利を獲得出来る資本主義を体現し(Revolution)、初めて牛丼を食べれたその日は部室の窓の外からは夏の風と共にHOT LIMIT(T.M.Revolution)が流れて来たのでした。

 

「もしかしたらこれはこうかもしれないので出来ない」という保守的対応は、確かに問題を起こさないためにはベターな選択の一つかもしれない。しかし、そうやって溜まっていった澱や歪みは、「もしかしたら、いつか取りに来るかもしれないので捨てられない」という保守的思考のもと部室に溜まってゆくゴミやカードが象徴するようにいつか飽和量に達し、結局動く人間が対応に追われる事になる。

私達はどちらの立場からも自分を見直す反省点を見つける事が出来ると思う。どちらが良いとか悪いとかはその時々の状況によって違うだろうし、後になって良し悪しの分水嶺が突然出現し結果が変わることもあるだろう。少なくとも、どちらの立場でもよく思考を巡らす事が重要で、その思考を巡らす事、おもいやりが自戒を込めていうと一番難しい事なのかもしれない。

 

なんだか、最後だけ良い文章(問い掛け文にしたら良い文章っぽくなるよね)かのようにまとめたけど、本文を読み返すと『マジの無能の先輩と部費を濫用して牛丼を食う後輩のいるサークルの話』という地獄新聞になっている気もする。最低だ。俺って(碇シンジ)。

 

 

もう長いこと学生生活を送ってて色んな人を見てるけど、結局動いてた先輩や同期は良い会社行ってて、動いてなかった保守なのかサボりなのかわからない何もしてなかった先輩は無職かフリーターが本当に多いのは何かしら相関関係あるかもしれん。

 

くだんのペンも、途方も無いバカが購入を遮ってるだけで、購入していいに決まってると思います。

 

チャオ〜。